飛び込み営業マンから住宅・不動産ライターに転身したワケ

「ぼくはしょうらい社長になって、100つぼのとちに50つぼの家をたてて、シェパードとドーベルマンをかいます」
はじめて作文を書いたのは小学校1年のときだった。テーマは「しょうらいのゆめ」。悩むことなくいつも考えていることを書いた。
シェパードは『刑事犬カール』、ドーベルマンは『ドーベルマン刑事(デカ)』が当時流行っていたからだと思うが、なんで100坪なのかは思い出せない。おそらく100=大きいと感じていたからだろう。
以来ずっと「大人になったら一戸建てを買う!」と決めていた。当時から田んぼに全身ダイブをするくらい自然に親しみ、その姿を見つけると1分で髪の毛がヨダレでテッカテカになるほど大型犬が好きだったので、とにかく広々とした庭がある家に住みたかったのだ。

大人になったら一戸建てを買う

小3の頃からは持ち物すべてにこだわりが出てきた。ボールペン1本でも納得するまで「なぜこれを買うか?」を考えるようになったのだ。文房具店で取っ替え引っ替え握り、気がつくと2時間といったこともあった。小6の時にまだ正規輸入前だったニューバランスのスニーカーを御徒町で手に入れたウキウキ感は今も忘れていない。当時「たのきん」が履いていたナイキはミーハーだと信じていたのだ。その靴は30年後の今も我が家にある。

中学校に入ると電気製品の性能を比較するのが楽しくなった。高校に合格したらステレオを買ってもらうと約束と取りつけた時は「SN比は?」「ダイナミックレンジは?」「ひずみ率は?」と1年以上かけて調べた。聴く曲はユーロビートだったけど。

それ以来家電を手に入れる過程は毎回心ときめくイベントとなった。90年代後半からはネットで検討商品のメリット・デメリットを調べるようになった。分からないことはメーカーのお客様相談室に電話をする。その結果をエクセルの比較表にする。ターゲットが絞れたら価格.comで最低価格を確認。次にヤフオクで新古品など目玉商品がないかチェック。
データがそろったら近所の量販店へ買いに行く。ネット販売よりも高額なことが多いが、故障時の対応がいいからだ。そこで出来るだけネットに近い値段になるよう交渉し、購入。
このようにベストをつくした後は実に爽快な気持ちになれる。まさに“やり尽した感のガッツポーズ”の瞬間だ。

そんな私が過去最高のガッツポーズをしたのが“家づくり”だった。
家の購入を検討し始めたとき「中身なんてみんな似たようなもんでしょ。デザインと値段で決めればいい」と思っていた。ところが調べれば調べるほどその奥深さにビックリ、そしてゲンナリ。住宅会社は1社1社家に対する考え方も違えば、使用する部材も異なることが分かってきたからだ。
あまりにも選択肢が多すぎる。だがいい加減に選ぶわけにはいかない。メーカーよってアフターフォロー体制が違い、住宅性能も違う。その差異が入居後の快適性に直結し、生活そのものへ影響する。
家を買う=生活スタイルを買う
ことになるのだ。
そこで、「では、自分はどんな生活スタイルを理想としているのだろう」と考えた。
・ 大型犬と一緒にのびのび暮らしたい
・ 真冬でも裸足ですごしたい
・ 週末はホームシアターを楽しみたいので遮光が必要
・ 屋上で大人10人程度のパーティーをしたい
・ 毎週海に行くので玄関にサーフボードを並べるスペースがほしい
といった理想の生活パターンを自分で理解していないと「日曜日は毎週不満」といった家になってしまう。要するに家を買う際にもっとも重要なのは、どうすれば一日、一週間、一カ月、一年、一生を満足して生活できるかを“自己分析”することだと気づいたのだ。

生活スタイルを買う

「営業に行ってきます!」と毎朝会社を飛び出し住宅展示場に直行、そして深夜の帰宅後はノートにびっしりと自己分析結果を書き込むこと数カ月。その途中で理想の間取りも自分で書くことができた。

理想の間取り

このような過程で完成したのが現在の我が家。今までの半生で
「よくがんばった!自分で自分を誉めてあげたい!!」
ということが4回ある。
1回目は浪人後の大学合格(高校3年時の現国の偏差値は26)
2・3回目は仕事
4回目がこの家づくり。
その中で「楽しかった!」と言えるのは唯一この家づくりだけだ。通常買い物というのは手に入れた瞬間の満足度がもっとも高いと言われている。しかし我が家の場合は「予想通り 夏でも涼しいな」「いつ見てもこの外壁の色はいい」「この脱衣室からバルコニーへの動線は今考えても最高だ」など築10年たった今でもアップし続けている。やっぱり100%納得できるまで考え抜いてよかった。しかもその過程が楽しいなんて最高ではないか。

理想の間取り

そこではたと気づいた。理想の仕事、つまり
「自分が楽しいと思えること
=世の中に喜んでもらえること、はこれなんじゃないか!?」

一般的には仕事や家事をさぼって一日中家のことばかり考えていられないし、調べれば調べるほど出てくる住宅の情報を網羅的に入手するのは難しい。しかし何カ月、人によっては何年も頭から湯気を出し続け検討を繰り返さなければ、心の底から満足できる家を建てることはできない。
一方で私はたとえ他人の家でも、その人の性格、家族構成、収入、仕事、趣味などを考慮して、どんな家なら満足できるかを考えるのが大好きだ。一日中やっていてもまったく・これっぽちも飽きない。しかも「こんないいモノあるの知ってる?」と伝え、「へぇ〜知らなかった。それ欲しい!」と言われるのが、ムズムズするくらいうれしい。さらに伝える相手が、まるでそのモノを見た・触れた気持ちになれるように言葉を取捨選択する作業も、また楽しくてしかたないのだ。

「ならばこれからも住宅の最新情報を集めよう。そして出来るだけ多くの人に言葉を駆使して発信し、効率よく人生最高の爽快感を味わってもらおう!」
この思いで脱サラ⇒住宅・不動産ライターとなったのです。